内反小趾のMIS

Minimally invasive surgery (MIS)/Percutaneous surgery for bunionette correction without internal fixation

内反小趾とは

小指の付け根が出っぱっているもので、外反母趾を合併していることも多いです。小指の付け根の骨(中足骨頭)が大きかったり、小指に続く甲の骨(中足骨)が外向きだと、靴を履いた時に当って痛くなり、タコや水のたまった袋ができたり、指先に行く神経が押されて小指がしびれることもあります。 

 立位レントゲンで3〜4タイプに分類されます(最近では5タイプに分類する先生もいらっしゃいます)。

手術の適応、非適応

靴の工夫やパッド、足底挿板では痛みが改善しない、靴の選択が難しいなどの場合、ご希望に応じて手術をしています。

 手術をお勧めしないのは、現在明らかな感染がある、阻血性疾患の合併、重度の糖尿病、喫煙する、術後の安静が守れない方、小児などです。

 手術が決まったら、下のような計測をして内反小趾のタイプを判断し、骨切りの位置を計画しています。

当科での手術法

内反小趾の矯正には、中足骨を切ります。骨切りの位置を変えることで、全タイプに対応しています。従来ですと1.5〜数cmの切開が必要でしたが、当科では5mmほどの小切開1か所で矯正しています(まれに、重度の関節拘縮や、小趾が第4趾の上に乗り上がっている、または下に潜り込んでいる場合などには、関節包や腱の切離、中足骨頭の部分切除、基節骨の骨切り等も追加することがあり、その際は複数の小切開を追加します)。

 最近は、ワイヤーやスクリューによる内固定は止めました。従来の手術法の術後合併症の50%以上が、これら内固定と関係しているという報告が出たためです。内固定の代わりに指の間をガーゼまたはテーピング固定します。荷重や腱の牽引力で、術後に中足骨頭が自動的に内側に移動していきます。

     術前     術直後 さらに経過     最終 

実際の手術例

術後数か月の立位レントゲン写真と、術後2週で抜糸直前の外観です。この方は両足同時に、外反母趾も含めて経皮的手術をしています(青い印は術直前の皮膚マーカーで、洗えば落ちます)。従来の方法より腫れが少ないです。

別の例の、術後数か月の立位レントゲンと外観です。この方も外反母趾を同時に経皮的手術で矯正しています。

長所、短所

長所:従来法より小切開のため、術後の痛みや腫れが少なく、早期から歩行が安定します。

短所:骨癒合の遷延や変形治癒を予防するため、患者様の十分なご理解とご協力が必要ですが、これは従来法でも同様です。

手術による合併症の可能性

従来法と同様、以下のような合併症を生じる恐れがありますが、可能性は従来法と同等または少ないとされています。

 感染、神経・血管・腱損傷、熱傷、縫合不全、骨癒合不全(偽関節)、骨棘や増生した仮骨による刺激、浮趾、中足骨頭壊死、再発、変形性関節症の進行、疼痛部位の変化、再手術、関節可動域制限、使用した薬の副作用、深部静脈血栓症、肺塞栓症など。

手術までの流れ

術前検査:予め、外来で必要な検査を行います。既往症や、検査結果に問題があった場合などには、事前に当院・当該科の受診が必要です。かかりつけ医師からの情報提供が必要な場合もあります。

 術前後に中止が必要な薬もあります。服用されている薬は、必ず全てご申告ください。

装具の購入:術後に使う靴型装具を装具士から購入していただきます。底が平らで固く、曲がらないものです。残念ながら保険はききません。税抜きで3000円です(2021年現在)。左右兼用のため、同様の術式であれば、後日、反対側の手術の際も使えます。

例:

 

入院、手術、退院

*海外では、ほとんどが日帰り手術ですが、日本では保険制度などの諸事情から、短期間の入院になることが多いです。

入院:手術の前日に入院していただきます。手術当日は、麻酔専門医が全身麻酔または腰椎麻酔を行います。

 日帰り手術を希望される場合は当科での局所麻酔になりますが、基本的には短期間でも入院をお勧めしています。

手術当日:手術時間は、片側の内反小趾だけなら5分くらいです。ただし、術前の麻酔や準備の時間、術後のレントゲン写真、麻酔からの覚醒なども含めますと、手術室に入室してから退室するまで、1時間ほどかかります。

 外反母趾やその他の足趾変形に対しても、同時に手術を希望される方が多いです。これらも、可能な範囲で経皮的手術、小侵襲手術で行っています。

 手術当日から、感染予防のために抗生剤を投与します。鎮痛剤も投与します。

術後:麻酔法にもよりますが、内反小趾の矯正だけなら、手術当日または翌日から靴型装具を付けて歩行を開始します。ただし、当初は腫れるため足部の冷却と挙上が大事で、抜糸するまでは下垂や歩行は1時間のうち15分以内をお勧めしています。

 抜糸は術後2週くらいで行っています。金具による内固定をしない代わりに、指の間のガーゼまたはテーピングによる固定を1か月ほど継続します。

この写真では、わかりやすいようにテーピングの色を変えてあります。

退院:術後経過で特に問題がなければ、数日以内で退院可能です。ただし、組み合わせた術式によってはしばらく荷重ができなかったり、遠方で通院するのが大変といった場合には、入院の継続を希望する方もいます。

術後の通院

最初の1か月は1週おきで、その後は徐々に間をあけていきます。靴型装具の使用は6週間くらいで、その後はスニーカーなどに変更します。踏み返しは術後2か月くらいから、順調なら軽い運動は3か月後くらいから行うのが目安です。ただし、術式や骨癒合の具合、年齢などによって変わることがあります。

 術後3か月以降は3〜6か月おきで、半年から1年後くらいまでは様子をみますが、経過や同時に重度の外反母趾なども手術した場合には、その後もフォローさせていただくことがあります。

 なお、個人差もありますが、術後3か月くらいは足がむくむことがあります。

費用の概算、その他の注意

内反小趾の手術には保険がききます。詳しくは、会計窓口にお問い合わせ下さい。

*術式、組み合わせの手術の有無、入院期間、保険などによって、費用が変わります。

*一般に、通常の靴が履けるようになるには6週間くらい、しっかりした骨癒合が得られるのに3か月くらいかかり、患者様の十分なご理解とご協力が必要です。手術するかどうか、どの術式で行うかは、診察・検査と、よくご相談させていただいた上で決めています。

*両足同時の手術を希望される方も増えてきました。車の運転は装具が外れてからになりますので、すぐに車を運転したい場合は、運転に支障が少ない左足からの手術をお勧めしています。

代表的な参考文献

Laffenetre O, et al. Percutaneous bunionette correction: results of a 49-case retrospective study at a mean 34 months’ follow-up. Orthop Traumatol Surg Res 101(2):179-184, 2015. 

Redfern DJ, Vernois J. Percutaneous surgery for metatarsalgia and the lesser toes. Foot Ankle Clin 21(3):527-550, 2016. 

Ceccarini P, et al. Bunionette. Minimally Invasive and Percutaneous Techniques: A Topical Review of the Literature. Foot Ankle Spec 10(2):157-161, 2017.

Martijn HA, et al. Fifth Metatarsal Osteotomies for Treatment of Bunionette Deformity: A Meta-Analysis of Angle Correction and Clinical Condition. J Foot Ankle Surg 57: 140–148, 2018.

Shimobayashi M, et al. Radiographic Morphologic Characteristics of Bunionette Deformity. Foot Ankle Int
37(3): 320–326, 2016.

Kurashige T: Percutaneous Bunionette Correction without fixation: Clinical Results and Radiographic Evaluations Including Rotation of Metatarsal Head and Sagittal Angle Change of Fifth Metatarsal. J Foot Ankle Surg. May 14, 2021.

ご興味のある先生で、参考文献を探しておられる方に、MIS足の外科センターからのおすすめの書籍を掲載しておきます。

タイトルとURLをコピーしました