リスフラン関節症のMIS

Minimally invasive surgery (MIS)/Percutaneous surgery for Tarsometatarsal joint arthritis

変形性リスフラン関節症とは

足の甲のところにリスフラン関節という関節があります。リスフランはナポレオンの軍医だった人で、当時の戦争でこの部位での切断術を多くしたために、名前が残っています。歌手の方が手術を受けてマスコミに取り上げられたこともあり、以前より名前をご存知の患者様も多くなりました。

 普段この関節の動きを意識することはないと思いますが、接地や踏み返しなど、ここが微妙に動くことで足がショックを吸収するようになっています。この関節が、外傷や関節リウマチ、外反母趾の合併などで負担がかかると壊れてきて痛みます。外傷では、つま先を強く着いた時に、第1趾と2趾の付け根にあるリスフラン靱帯が損傷します。脱臼骨折を伴っている場合もありますが、レントゲンではわかりにくいこともあります。荷重や踏み返しで痛み、足の甲に骨棘ができて、そこが当って正座が困難になることもあります。神経がその上を通っているので、神経痛やしびれになっている方もいます。一次性、つまり外傷やリウマチなどの明らかな原因がない場合、65%で外反母趾を合併しています。ほとんどの場合、外反母趾よりも痛いのはリスフラン関節のほうです。リスフラン関節は、内側柱(第1趾)、中間柱(第2,3趾)、外側柱(第4,5趾)の3つに分けられますが、中間柱の症状が最も多いです。

 これは、中間柱(第2,3趾)の変形性リスフラン関節症の例です。

手術の適応、非適応

足底挿板や鎮痛剤で痛みが改善しない、足の甲の骨棘が当って靴の選択が難しいなどの場合、ご希望に応じて手術をしています。

 手術をお勧めしないのは、足の甲の皮膚に明らかな感染や皮膚病変がある、阻血性疾患の合併、重度の糖尿病、喫煙、術後の安静が守れない方などです。

 手術が決まったら、術前にCT, MRIも検査して、どの関節まで固定するかを確定し、それぞれの関節の幅や深さ、入れるスクリューの方向や長さを計画しています。

当科での手術法

中足骨を短縮して関節にかかる負担を減らす方法もありますが、痛みが改善するまでに時間がかかったり、術後につま先が床から浮いている「浮趾」が気になってしまう方もいます。現在も、手術のゴールド・スタンダードは関節固定です。ただし、中間柱だけでなく外側柱(第4,5趾)まで完全に固定してしまうと、足の柔軟性がますます少なくなってしまうので、症例にもよりますが、外側柱は第3腓骨筋腱を腱球にして挿入することで、若干の動きを残すことも検討します。

 関節固定の場合、従来ですと数cmの縦切開を固定箇所に応じて複数、または横切開が必要でした。プレートを使った強固な固定もできますが、足の小さな人には既製のプレートが合いにくいことがあり、また後日プレートのトラブルで抜去が必要になったという報告もあります。

 当科では1cmほどの小切開で骨棘切除と最小限の関節内操作を行い、周囲の骨や靭帯を極力温存することで、過度の不安定性を生じないようにしています。その切開よりやや足先または足首寄りに小切開を追加し、そこからスクリューで固定しています。今までは腸骨(ズボンのベルトがかかる付近の骨盤)の上を2cmくらい切開し、そこから採取した骨をスクリュー周囲に移植していました。最近は人工骨の癒合成績が改善してきたため、今後は人工骨も使うことで腸骨の侵襲も減らしていく予定です。

 下図は、中間柱(第2,3関節)の固定と外反母趾の矯正をした方です。この方の場合、スクリューは足首寄りの一つの切開から入れられました。

       術前           術後2週       骨癒合後

 なお、外側柱に対する第3腓骨筋腱を使った腱球挿入の場合には、今のところ、足部外側に3cmほどと、腱を切るために足関節前外側にも2cmほどの切開が必要です。

実際の手術例

この例では、第2,3関節固定だけでなく、重度外反母趾矯正のために第1関節固定も行っています(経皮的Lapidus変法)。また、第2MTP関節脱臼整復と骨長の調整のため、第2,3,4中足骨の短縮も行っています。各手技とも全て小侵襲手技で行いました。白い矢印が第2,3リスフラン関節固定術のための切開です。この方は足が小さく、うまく合うプレートがなかなか見つかりませんでした。従来法でも複数の切開が必要でしたが各切開が接近してしまい、皮膚障害の恐れがありましたが、小侵襲手技で問題なく経過しました。自家骨を採取した腸骨の切開は2cmでした。

            術後1年      術後2週      術後1年

こちらは、数年前の外傷後の方です。外側柱(第4,5関節)で丸く抜けている部分には、動きを残すため、第3腓骨筋腱を使った腱球を入れました

長所、短所

長所:従来法より小侵襲のため、術後の痛みや腫れが少なく、同時に行った手術にもよりますが、たいていは手術翌日から、かかと荷重や靴型装具をつけて歩行を開始しています。

短所:骨癒合の遷延や変形治癒、スクリューの破損を予防するため、患者様の十分なご理解とご協力が必要ですが、これは従来法でも同様です。

 骨を削る量が少ない分、大きな変形がある場合には矯正が不足するため、追加の術式が必要なことがありますが、それも基本的には小侵襲手技で行っています。

手術による合併症の可能性

従来法と同様、以下のような合併症を生じる恐れがありますが、可能性は従来法と同等または少ないです。

 感染、神経・血管・腱損傷、熱傷、縫合不全、骨癒合不全(偽関節)、浮趾、中足骨頭壊死、再発、残した部位の変形性関節症の進行、疼痛部位の変化、再手術、関節可動域制限、使用した薬の副作用、深部静脈血栓症、肺塞栓症など。

 今のところ、骨癒合率は90%以上、1例で偽関節がありましたが経過観察で痛みもなくなりました。一時的に骨移植した背側に骨ができすぎて膨隆したことがありますが、徐々に改善し、再手術にはなりませんでした。

手術までの流れ

術前検査:予め、外来で必要な検査を行います。既往症や、検査結果に問題があった場合などには、事前に当院・当該科の受診が必要です。かかりつけ医師からの情報提供が必要な場合もあります。

 術前後に中止が必要な薬もあります。服用されている薬は、必ず全てご申告ください。

装具の購入:術後に使う靴型装具を、装具士から購入していただきます。かかと寄りに荷重するものです。税抜き12340円(2021年現在)ですが保険がきくので、後日申請していただくと、負担分に応じて返金されます。左右兼用のため、同様の術式であれば、後日、反対側の手術の際も使えます。

装具の例:

入院、手術、退院

*海外では、ほとんどが日帰り手術ですが、日本では保険制度などの諸事情から、短期間の入院になることが多いです。

入院:手術の前日に入院していただきます。手術当日は、麻酔専門医が全身麻酔または腰椎麻酔を行います。この手術は、日帰り手術では行っておりません。

手術当日:手術時間は、固定する関節の数や同時手術する変形によって、様々です。手術当日から、感染予防のために抗生剤を投与します。鎮痛剤も投与します。

術後:手術室で撮影できるレントゲンでは評価しにくいことがあり、スクリューの位置や方向を確認するため、翌日にCT検査をすることがあります。また、CTは後日の癒合確認にも行うことがあります。

 骨脆弱性や固定力などに問題がなければ、手術翌日から靴型装具を付けて荷重を開始します。ただし、当初は腫れるため足部の冷却と挙上が大事で、抜糸するまでは下垂や歩行は1時間のうち15分以内をお勧めしています。

 抜糸は術後2週くらいで行っています。同時に行った手術によって、指の間のガーゼまたはテーピング固定を1か月ほど追加することがあります。

退院:術後経過で特に問題がなければ、数日以内で退院可能です(3泊4日くらいのかたが多いです)。ただし、組み合わせた術式によってはしばらく荷重ができなかったり、かかと荷重で日常生活がしばらく困る、遠方で通院するのが大変といった場合もあり、この手術はしばらく入院の継続を希望する方が多いです。

術後の通院

通院:最初の1か月は1週おきで、その後は徐々に間をあけていきます。靴型装具の使用は6週間くらいで、その後はスニーカーなどに変更します。術中に骨脆弱性が強かったり、固定力に問題があった場合には、長めに装具を使っていただいたり、足底挿板を作成、装着していただくことがあります。踏み返しは術後2か月くらいから、順調なら軽い運動は3か月後くらいから行うのが目安です。ただし、術式や骨癒合の具合、年齢などによって変わることがあります。

 術後3か月以降は3〜6か月おきで、半年から1年後くらいまでは様子をみますが、経過や同時に重度の外反母趾なども手術した場合には、その後もフォローさせていただくことがあります。

 個人差もありますが、術後3〜6か月くらい、足がむくむことが多いです。

費用の概算、その他の注意

この手術は保険がききます。なお、他の疾患の手術もそうですが、日本では従来法での手術でも小侵襲手術でも、手術費用は同じです。詳しくは、会計窓口にお問い合わせ下さい。

*術式、組み合わせの手術の有無、入院期間、保険などによって、費用が変わります。

*一般に、通常の靴が履けるようになるには6週間くらい、しっかりした骨癒合が得られるのに3か月くらいかかり、患者様の十分なご理解とご協力が必要です。手術するかどうか、どの術式で行うかは、診察・検査と、よくご相談させていただいた上で決めています。

*術後、しばらくはかかと荷重となるため、この疾患の両足同時の手術はお勧めできません。まず疼痛の強い方から、またはすぐに車を運転したい場合は、運転に支障が少ない左足からの手術をお勧めしています。

代表的な参考文献

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Johnson JE, Johnson KA. Dowel arthrodesis for degenerative arthritis of the tarsometatarsal (Lisfranc) joints. Foot Ankle 6: 243-253, 1986.

Withey CJ, Murphy AL, Horner R. Tarsometatarsal Joint Arthrodesis with Trephine Joint Resection and Dowel Calcaneal Bone Graft. J Foot Ankle Surg 53: 243–247, 2014.

Smith SE, Camasta CA, Cass AD. A Technique for Isolated Arthrodesis of the Second Metatarsocuneiform Joint. J Foot Ankle Surg 48(5): 606–611, 2009. 

Nemec SA, Habbu RA, Anderson JG, Bohay DR. Outcomes following midfoot arthrodesis for primary arthritis. Foot Ankle Int 32:355-361, 2011.

Vernois J, Redfern D. Lapidus, a Percutaneous Approach. Foot Ankle Clin 25(3): 407-412, 2020.

ご興味のある先生で、参考文献を探しておられる方に、MIS足の外科センターからのおすすめの書籍を掲載しておきます。



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