Minimally invasive surgery (MIS)/Percutaneous surgery for painful interdigital corn
趾間胼胝とは
2本、時として3本の隣り合う足指の関節部分の膨らみが、ちょうどお互いにぶつかると、指の間にタコ(胼胝)ができます。通常の硬いタコと異なり、汗を吸って柔らかくなっていることが多いです。特に靴を履くとぶつかって、むしろ普通の硬いタコよりも痛くなります。実際、当科を受診した患者様も、足底や小指の外側にできた硬いタコは数年間ガマンされていた方もいますが、この趾間タコは、できてから半年、ガマン強い方でも3年くらいで限界になるほど、強い痛みのようです。
ほとんどの場合、外反母趾や内反小趾、ハンマー趾、関節リウマチなど、指の変形と拘縮が原因となっています。
手術の適応、非適応
指先の空間(トーボックス)の広い靴やシリコンなどのチューブでは痛みが改善しない(素材が合わず、かぶれる方もいます)、靴の選択が難しいなどの場合、ご希望に応じて手術をしています。
手術をお勧めしないのは、阻血性疾患の合併、重度の糖尿病、喫煙される方などです。現在明らかな感染がある場合も手術は避けたいところですが、手術しないといつまでたっても感染が治まらない場合は、やむなく手術を検討する場合もあります。
当科での手術法
事前に、レントゲンや、ときにCTなどで、タコの生じている部分の骨の突出だけでなく、趾間タコを生じた足部の変形を確認します。タコの下の骨を削るだけ(経皮的顆部部分切除)で済むのか、ぶつかる相手の指の骨も削ったほうがいいのか、また再発の可能性を減らすために関与した変形も矯正するのか等を、十分に検討します。
従来法だと趾間を直接切開する必要があり、指が開きにくくて見づらい、不潔になりやすい部位のため術後感染、爪の変形、皮膚トラブルなど、2003年のアメリカの論文で55%に術後合併症があったと発表されています。以来、2020年頃まで手術成績を報告する英語論文はありませんでした。
これに対してMISはブレークスルーになる方法だと考えています。手術の際は、タコの部位に応じて、やや離れたつま先や背側、または底側から、タコの下の骨を削ります。必要に応じて関連する足指の変形も同時に矯正します。
実際の手術例
術前 術後2週でタコは消失。
最終診察時。外反母趾などの矯正は希望されず、タコの下の骨だけ削りました。
再発防止を考えると、普通は外反母趾や足趾の外反変形も同時に矯正することをお勧めしています。
別の方です。外反母趾も同時に矯正しました。
術前 術後2週 術後約2年
潰瘍にまでなってしまっていた例。タコの下の骨を削った他、外反母趾、第2趾の矯正なども行いました。
背側の切開で骨を削り、術後2週で潰瘍は治りかけています。
この方は、他院で骨折の手術をしましたが変形が残ってしまった例です。ワイヤー抜去と矯正骨切りも同時に行いました。ワイヤー抜去とは別に、骨を削ったり矯正したのは白い矢印の傷からです
長所(、短所)
長所:小切開のため、術後の痛みや腫れが少なく、早期から歩行が安定します。従来法と比べた場合、短所は特にないと考えています。
手術による合併症の可能性
従来法と同様、以下のような合併症を生じる恐れがありますが、従来法と比べると圧倒的に少ないです。
感染、神経・血管損傷、熱傷、縫合不全、骨折、骨棘や増生した仮骨による刺激、関節の不安定性、再発、疼痛部位の変化、再手術、関節可動域制限、使用した薬の副作用、深部静脈血栓症、肺塞栓症など。
入院、手術、退院
術前検査:予め、外来で必要な検査を行います。既往症や、検査結果に問題があった場合などには、事前に当院・当該科の受診が必要です。かかりつけ医師からの情報提供が必要な場合もあります。
術前後に中止が必要な薬もあります。服用されている薬は、必ず全てご申告ください。
装具の購入:趾間タコ単独の手術であれば、包帯を巻いても足が入る大きめの靴やサンダルがあれば、特に装具はいりません。外反母趾など他の変形も同時に矯正した場合は、それに応じて術後に使う靴型装具を装具士から購入していただきます。
入院:*海外では、ほとんどが日帰り手術ですが、日本では保険制度などの諸事情から、短期間の入院になることが多いです。
手術の前日に入院していただきます。手術当日は、麻酔専門医が全身麻酔または腰椎麻酔を行います。
趾間タコ単独の手術の場合、日帰り手術を希望される場合は当科での局所麻酔になります。
手術当日:手術時間は、タコ単独なら1か所につき5分くらいですが、たいていの場合は他の変形の矯正も必要となり、また術前の麻酔や準備の時間、術後のレントゲン写真、麻酔からの覚醒なども含めますと、手術室に入室してから退室するまで、1,2時間ほどかかります。
手術当日から、感染予防のために抗生剤を投与します。鎮痛剤も投与します。
術後:麻酔法にもよりますが、タコだけなら、手術当日または翌日から歩行を開始します。ただし、当初は腫れと疼痛軽減のため、足部の冷却と挙上をお勧めしています。
抜糸は術後2週くらいで行っています。
退院:術後経過で特に問題がなければ、数日以内で退院可能です(ほとんどのかたは、2泊3日〜3泊4日です)。ただし、組み合わせた術式によってはしばらく荷重ができなかったり、遠方で通院するのが大変といった場合には、入院の継続を希望する方もいます。
術後の通院
通院:経過に問題なければ、術後2週で抜糸します。その後は同時に手術した部位があれば、それに応じて経過をみます。
費用の概算、その他の注意
この手術には保険がききます。詳しくは、会計窓口にお問い合わせ下さい。
*術式、組み合わせの手術の有無、入院期間、保険などによって、費用が変わります。
*手術するかどうか、同時に行う術式が必要かどうかは、診察・検査と、よくご相談させていただいた上で決めています。
代表的な参考文献
Coughlin M, et al.: Operartive Repair of Fourth and Fifth Toe Corns. Foot Ankle Int, 2003.
De Prado M, Ripoll PL, Golano P. Digital exostoses. In Minimally Invasive Foot Surgery, pp 248-255, edited by De Prado M, Ripoll PL, Golano P, About Your Health, Barcelona, 2009.
Kurashige T: Minimally Invasive Surgery for Interdigital and Lateral Fifth Toe Corns: Case reports. Foot & Ankle Surgery: Techniques, Reports & Cases, 2021 Apr.
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