内転中足を伴う外反母趾のMIS

Minimally invasive surgery for hallux valgus with metatarsus adductus

内転中足とは

主に先天的に中足骨が内反、つまり内側に向いている状態です。外反母趾の方の30%に見られると言われています。立位レントゲンで内転中足角という角度を測定し、正常が0〜15度なのに対して、20度以上が中等度、25度を超えると重度とされています。外反母趾の矯正術の際に大問題となるもので、この中等度から重度の例で、内転中足をそのままにして外反母趾のみ矯正すると、外反母趾が29%で再発すると言われています。そもそも矯正自体が不十分になりやすいです。なぜかというと、外反母趾の手術の際には、どの術式であっても、第1中足骨頭を外側に移動させなければなりませんが、内転中足があると、第2中足骨頭がじゃまをして、第1中足骨頭が十分外側に移動できないからです。

  *内転中足角

 

解決法としては、第2中足骨以下を、外反母趾の矯正前に外側にずらしておきます。

手術の適応、非適応

一般の外反母趾と同様に、靴の工夫や足底挿板では痛みが改善しない、靴の選択が難しいなどの場合、ご希望に応じて手術をしています。

 手術をお勧めしないのは、現在明らかな感染がある、阻血性疾患の合併、重度の糖尿病、喫煙する、術後の安静が守れない方、小児などです。

当科での手術法

第2中足骨頭以下を外側にずらす方法としては、中足骨を①足首に近いところ、②真ん中辺、③骨頭に近いところで切る方法があります。従来の報告では①が多かったですが、理由としてはそこで切ったほうが骨頭をより外側にずらせるからでした。ただ、足のアーチの頂点に近い部位での骨切りになるため、スクリューやプレートなどによる強固な固定が必要で、さらに全体重をかけて歩けるようになるまで6週間くらいかかります。

 当科の方法は、内転中足の程度に応じて、③または②と③の間くらいで骨切りを行い、靴型装具をつけて翌日から荷重を許可するというものです。

実際の手術例

内転中足角が右で30度、左で27度、外反母趾角も右45度、左50度で、両側の重度内転中足を伴う重度外反母趾の方です。

第2,3,4中足骨の遠位骨切りによる内転中足の矯正後、外反母趾矯正(MICA: minimally invasive chevron/Akin骨切り術)を行いました。他にも、第2,3趾のハンマー趾矯正、MTP関節亜脱臼の整復、MTP関節の外反変形の矯正も同時に行いました。下図の楕円が小切開(各5mm前後)、点線が骨切り予定線です。

左右の術前と術直後です。

翌日から下のような、底が平らで固く曲がらない靴型装具をつけて歩行を開始しました。

術後9か月

長所、短所

長所:従来法より小切開・小侵襲のため、術後の痛みや腫れが少なく、早期から荷重できます(従来法だと、一般的には6週間くらい非荷重とされています)。

短所:骨癒合の遷延や変形治癒を予防するため、患者様の十分なご理解とご協力が必要ですが、これは従来法でも同様です。

手術による合併症の可能性

従来法と同様、以下のような合併症を生じる恐れがあります。

 感染、神経・血管・腱損傷、熱傷、縫合不全、骨癒合不全(偽関節)、骨棘や増生した仮骨による刺激、浮趾、中足骨頭壊死、再発、変形性関節症の進行、疼痛部位の変化、再手術、関節可動域制限、使用した薬の副作用、深部静脈血栓症、肺塞栓症など。

入院、手術、退院

*海外では、ほとんどが日帰り手術ですが、日本では保険制度などの諸事情から、短期間の入院になることが多いです。

術前検査:予め、外来で必要な検査を行います。既往症や、検査結果に問題があった場合などには、事前に当院・当該科の受診が必要です。かかりつけ医師からの情報提供が必要な場合もあります。

 術前後に中止が必要な薬もあります。服用されている薬は、必ず全てご申告ください。

装具の購入:術後に使う靴型装具を装具士から購入していただきます。底が平らで固く、曲がらないものです。残念ながら保険はききません。税抜きで3000円です(2021年現在)。左右兼用のため、同様の術式であれば、後日、反対側の手術の際も使えます。

入院:手術の前日に入院していただきます。手術当日は、麻酔専門医が全身麻酔または腰椎麻酔を行います。

手術当日:通常の外反母趾よりも手術には時間がかかりますが、上記の例では右67分、左79分でした。ただし、術前の麻酔や準備の時間、術後のレントゲン写真、麻酔からの覚醒なども含めますと、手術室に入室してから退室するまで片足で2時間ほどかかります。

 手術当日から、感染予防のために抗生剤を投与します。鎮痛剤も投与します。

術後:麻酔法や組み合わせた術式にもよりますが、当科でよく行っているMICA法で外反母趾と同時手術をした場合、手術当日または翌日から靴型装具を付けて歩行を開始します(従来法だと、一般的には6週間くらい非荷重とされています)。ただし、当初は腫れるため足部の冷却と挙上が大事で、抜糸するまでは下垂や歩行は1時間のうち15分以内をお勧めしています。

 抜糸は術後2週くらいで行っています。ワイヤーを併用した場合は、術後3週で抜去することが多いです。指の間のガーゼまたはテーピングによる固定を1か月ほど継続します。6週で装具を終了、運動靴に変更するのが標準です。ただし、術式や骨癒合の具合、年齢などによって変わることがあります。

術後の退院

術後経過で特に問題がなければ、数日以内で退院可能です(3泊4日くらいのかたが多いです)。ただし、組み合わせた術式によってはしばらく荷重ができなかったり、遠方で通院するのが大変といった場合には、入院の継続を希望する方もいます。

通院:最初の1か月は1週おきで、その後は徐々に間をあけていきます。術後3か月以降は3〜6か月おきで、半年から1年後くらいまでは様子をみますが、経過や同時に重度の外反母趾なども手術した場合には、その後もフォローさせていただくことがあります。

 なお、個人差もありますが、術後3〜6か月くらいは足が浮腫みます。

費用の概算、その他の注意

外反母趾、内転中足の手術には保険がききます。詳しくは、会計窓口にお問い合わせ下さい。

*術式、組み合わせの手術の有無、入院期間、保険などによって、費用が変わります。

*術後は、患者様の十分なご理解とご協力が必要です。手術するかどうか、どの術式で行うかは、診察・検査と、よくご相談させていただいた上で決めています。

*両足同時の手術を希望される方も増えてきました。車の運転は装具が外れてからになりますので、すぐに車を運転したい場合は、運転に支障が少ない左足からの手術をお勧めしています。

代表的な参考文献

Aiyer AA, Shariff R, Ying L, Shub J, Myerson MS. Prevalence of Metatarsus Adductus in Patients Undergoing Hallux Valgus Surgery. Foot Ankle Int 35(12): 1292–1297, 2014.

Aiyer A, Shub J, Shariff R, Ying L, Myerson M. Radiographic Recurrence of Deformity After Hallux Valgus Surgery in Patients With Metatarsus Adductus. Foot Ankle Int 37(2): 165–171, 2016.

Vernois J, Redfern DJ. Percutaneous surgery for severe hallux valgus. Foot Ankle Clin 21:479-493, 2016. 

Burg A, Palmanovich E. Correction of severe hallux valgus with metatarsus adductus applying the concepts of minimally invasive surgery. Foot Ankle Clin 25(2): 337-343, 2020.

Leucht AK, Younger A, Veljkovic A, Perera A. The Windswept Foot: Dealing with Metatarsus Adductus and Toe Valgus. Foot Ankle Clin 25(3):413-424, 2020.

Shima H, Okuda R, Yasuda T, Mori K, Kizawa M, Tsujinak S,
Neo M. Operative Treatment for Hallux Valgus With Moderate to Severe Metatarsus Adductus. Foot Ankle Int 40(6): 641-647, 2019.

Kurashige T: Minimally invasive surgery for severe hallux valgus with severe metatarsus adductus: Case reports. Foot & Ankle Surgery: Techniques, Reports & Cases, 2021 Apr.

ご興味のある先生で、参考文献を探しておられる方に、MIS足の外科センターからのおすすめの書籍を掲載しておきます。

以下の本に5番目の文献が掲載されていますが、残念ながら手技の話だけで、その成績については触れていません。結果については、確か2021年のアメリカ足の外科学会で報告されていました。



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