残念な器具たち:ハサミ付き持針器(追記あり)

足の外科のMISでは、もちろん傷は従来の方法より小さいです。このため、海外の先生の中には、傷を縫わずにそのままにする方や、ステリー・ストリップという清潔なテープを傷に貼るだけの方もいます。

ですが、私は手術の終わりに傷を縫っています。その理由として、まったく縫わないよりは出血が少なくなること、傷が閉じている分、感染のリスクが減るのではないかと考えていること、また、テープだけだと出血ではがれてしまうおそれがあるためです。

従来の手術でもそうですが、縫合のときには針を安全、確実に持つための「持針器」という器具を使います。これを使って皮膚に糸をかけます。

その後、その糸を縫合するのですが、助手がいれば助手に糸を結んでもらったり、助手がいても部位によっては術者が自分で結ぶこともあります。また、一人で手術しているときは、当然、術者が自分で糸を結ぶことになります。

術者が結ぶ方法としては、いったん持針器を置いて指で結ぶ方法と、持針器を持ったまま、持針器の先を使って結ぶ方法があります。後者を器械縫合と言います。

糸を結んだら、ハサミで糸を切らないといけません。助手がいれば助手に切ってもらえますが、一人で手術をしているときには、術者が自分で切る必要があります。

利き手に持針器を持っているわけですが、その都度、持針器をハサミに持ちかえるのは時間のムダです。

なので、一人の場合、その利き手の薬指または小指にハサミの穴のひとつをかけて、持針器とハサミを同時に持ちながら糸掛けと器械縫合まで行います。

この場合でも、糸を切るときには持針器を置く必要があります。やはり、その都度これをくりかえすのは面倒です。

そこで、この器械の登場です。

これは、アメリカ足の外科学会に参加した際に、学会の器械展示場で見つけたアイデア商品です。直売もしていたので、その場で購入してしまいました。ドイツ製です。

この器具は、先端の針を持つ部分の奥に、糸を切るハサミがついているので、これ一つだけ持っていれば、器械縫合のあとも持針器を置くことなく、糸が切れます。

この部分がハサミになっています。

素晴らしいアイデアだと思ったのですが・・・、実際に使ってみると、針を持つ先端の部分がやや太くて、MISのときの繊細な縫合には使いにくいです。

また、ハサミとしても、先端がやや長めのため、細かい箇所で糸を切るときに邪魔になってしまい、また糸が見づらいです。結局、何度か使ったあとは、消毒したまま手術室の引き出しの中です。

もう少し小さいサイズだとよかったのかもしれませんが、これより小さいものは、残念ながら見たことがありません。

やや非効率的だとは思うのですが、結局は今まで通りに縫っています。MISでは従来法よりも縫う回数は少ないですし。


オルセンヘガール剪刀付持針器 TC付 14.0cm NS0856

Amazonで売っているもののほうが先端がやや細いかも知れませんが、実物は見ていません。

追記:この記事を書いた後の2022年2月末に、やはり気になったので、Amazonでこの器具のステンレス製の廉価版を購入してみました。日本製かと思ったのですが、説明書にはドイツ製、パキスタン経由、と書いてありました。最初に買ったものと比べて先端が若干細くなり、また角が少なくなって、縫合しやすくなりました。ハサミも、若干使いやすいので、しばらく使ってみたいと思います。

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