残念な器具たち:骨移植器

つい最近まで、日本では足の外科のMIS用の器具が手に入りにくかったため、他の手術の器械で使えそうなものを流用したり、若干改良してみたり、海外の学会などで使えそうなものを買って帰ったりしていました。

これは、以前、アメリカ足の外科学会に参加したときのことです。

会場の一角に、手術器械の展示と直売会場があったのでのぞいてみたところ、確かインド系の会社だっと思うのですが、とても熱心に売り込んできました。

その中で、少し興味を惹かれたのが、この骨移植器でした。

値段は覚えていませんが、かなり値引きしてくれたように思います。

今思うと、学会の会期も終わりに近づいていた頃だったので、売れないまま持ち帰るよりも、少しでも売りさばいて、帰りの荷物を減らそうとしていたのではないかと思います。

MISに限らず、整形外科の手術では、ときどき骨を切ってできた隙間などに、他の箇所から採集した骨を移植することがあります。

この器械は、端がカレーの皿のようになっていて(インドだから!?)、この皿の中に骨を入れて、棒で骨を押し込んで奥の方も骨移植をしやすくする器具とのことでした。

骨移植は、わりと手間のかかるときもあるので、これを使えば手術時間の短縮にもなるかもしれないと期待して、購入しました。

帰りの空港の荷物検査の際、レントゲン検査でひっかかってしまい、別室に連れて行かれてカバンを開けるように言われました。拳銃を機内に持ち込もうとしている疑いがある、というのです。

荷物検査のレントゲンを見せられましたが、この骨移植器の影が、確かに拳銃のようにも見えていました。下の写真のように、荷物の中で筒の部分が曲がらないよう、棒を通した状態にしていたのです。

中を開けてこの器械を取り出したところ、検査官は拍子抜けしたようで、これはなんだ?と質問されました。

なんとか説明して理解してもらい、晴れて無罪放免となりましたが、本物の拳銃を下げた係の人たち数人に囲まれて別室に連れて行かれたときには、さすがにあせりました。

さて、そんな体験をして日本に持ち帰ったこの器具ですが、なかなか使う機会がなく、何年もそのまま眠っていました。

しばらく前に、ようやく使ってみる機会があったのですが、肝心の骨が管の部分に詰まってしまい、後ろの棒をハンマーで叩いてみても、詰まった骨は出ないどころか、ますます固く詰まっていくだけで、結局役に立ちませんでした。

でも、せっかく買って、怖い思いもして持ち帰ったものなので、捨てるに捨てられず、結局、記念品として今でも机の下に眠っています。いつか活躍する日が来るかどうかは、わかりません。

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