残念な器具たち:耳鏡

前回の鼻鏡は、残念ながらMISでの使用には向いていないことがわかりました。

それでもこりないで、次にAmazonで購入してみたのが、この耳鏡です。

学生のときの実習で耳鼻科も回ったのですが、研修で使った覚えがありません。30年以上前のことなので、忘れているだけかも知れませんが。

鼻鏡と違って穴の大きさは決まっていますが、MIS手術のとき、切った骨の断面を観察したり、傷の中に取り除いたほうがいいような小さな骨の破片が残っていないかといった観察には使えるのではないか?と考えました。

届いてさっそく日常生活の中で試すと、びっくりするくらい中がよく見えます。しかも、耳鏡と違って、SサイズだとMISの創にも入る大きさでした。

これは使えるのではないか?と期待が膨らみました。

ただ、実物を前にして冷静に考えたり、いろいろな状況を想定して試してみた結果、やはり使えないという結論に達しました。

MISではターニケットという駆血帯を使わないため、ある程度の出血はするのですが、傷が小さくて、耳鏡と同じ傷から血液を取り除くための吸引管を同時に入れることができません。これだと、血液が邪魔になって、中を見るのが難しいです。

また、角度によって光線がうまく入らなくなると、よく見えなくなることがわかりました。手術中は、患者さんの足の位置やライトの位置が、術者の思うようにはならないこともあります。

術野を不潔にしないように、術者があまり顔を近づけて覗き込むのもご法度です。

さらに、小さなピンセットでも、耳鏡と一緒に入れることができない、ということに気づきました。傷の大きさを考えれば当たり前ですが、耳鏡を使うというアイデアに溺れてしまって、実際に実物をみるまでは、全く気づきませんでした(汗)。

そういえば、Amazonのレビューにも、「耳垢は見えるが、取ることができない」という書き込みがいくつもあったことを思い出しました。

つまり、骨の小さな破片を見ながら取り除くという操作はできません。

これが決定的となり、結局この器具もお蔵入りになりました。

整形外科の器械には、関節鏡という小さなカメラがあり、先端が2mmくらいのものもあるのですが、付属のモニターなどのレンタル料が発生するため、MISの手術で使うと予算オーバーになってしまいます。もっと手軽に使えるようになるといいのですが。

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