まだ日本でMISを初めたばかりの2011年5月、ベルギーのブリュージュで、初めて国際学会で発表をすることになりました。東日本大震災後、まだ間もないころです。
手術見学に行ったスペイン・バルセロナ大学のAsuncion先生から、今度学会があるから発表しよう、と勧められていたからです。
the 3rd International Foot & Ankle MIS Congress of the GRECMIPという学会です。
GRECMIPとはフランス語の略称で、国際最小侵襲足の外科学会のことです。最近では、名称が英語になり、MIFASという略称に変わっています。足の外科のMISと関節鏡手術に特化した学会です。
まだ日本でMISを開始して症例数も少なかったので不安でしたが、申し込んだところ、ポスターと口頭発表の両方をすることになりました。
今思えば、アジアからはMISについての発表が他になかったからかも知れません。関節鏡部門の発表では、香港のLui先生、Kong先生や、以前に日本の学会に講演に来られたこともある、香港足の外科学会の会長をされていたYip先生も来られていたのですが。
ところで、私は海外に行くと、たいがい何かのトラブルに巻き込まれるのですが、他の方もみなさんそうなのでしょうか?
このときは、直前にアイスランドの火山が噴火した影響で、ヨーロッパの空港に問題が起きてしまい、いきなり成田空港で6時間待たされることになりました。
ブリュッセルに到着したのは、予定時間から大幅に遅れて、夜の10時ころでした。
機内のスタッフに、明日からの学会に間に合うか訊いたところ、降りたあとは地上の係員に聞いてくれと言われました。が、空港に着いてみると、すでに店も各航空会社の窓口も全部閉まっており、誘導の係員などは全くいませんでした。通りかかった掃除のおばさんに駅の方角を教えてもらい、ようやく駅にたどり着きました。
空港のあるブリュッセルから、学会場のあるブリュージュまでは約100キロの距離で、電車に乗りそこねたら最後、翌朝からの学会に間に合いません。間違いは許されないので、恥も外聞もなく、プラットフォームにいたビジネスマンにこの電車で間違いないかとしつこく訊いたところ、車掌さんを呼んでくれました。彼に相談したら、たまたま同じ駅で降りる大学生がいるから一緒に行くといい、と紹介してくれました。道中、気が気ではなかったのですが、その学生さんとおしゃべりしながらようやくブリュージュ駅に着いたときには、もう真夜中でした。
駅を降りると、石畳でカートが引きづらく、薄暗い中を予約しておいたホテルを探し回りました。ホテルには、成田空港で待っている間に、到着が遅れるとメールしておいたのですが、用意しておいた地図が間違っていて場所がなかなかわかりませんでした。路上にたむろしている酔っ払いたちにジロジロ見られる中、ようやくホテルを発見したのですが、玄関がしまって電気も消えていました。その後、空いている裏口を発見して、ようやく入れてもらうことができました。こうして、なんとか翌日の早朝セッションから学会に参加できました。
行きはこんな感じでバタバタでしたが、苦労した甲斐はありました。
当時、手術の勉強のために無休助手として帝京大学病院に月1回通っていたのですが、そのころ教授をされていた高尾先生がフランスのGuillo先生にあらかじめ私が参加することを知らせてくださっていたおかげで、学会役員専用のディナーに招いていただきました。
他にもMISをされている海外の多くの先生にお会いすることができ、多くのことを学びました。
現在、外反母趾の手術でよく行っているMICA法についても、のちに師匠の一人となるVernois先生の講演を聴いて質問することもできました。
行きは全く余裕がなくて気づかなったのですが、帰りの空港で、小便小僧の由来がベルギーであることを初めて知りました。興味のある方は調べてみてください(笑)。
下の本には、Guillo先生やVernois先生も寄稿されています。ご興味があればご覧ください。