海外のMISセミナー その6 2013年 バルセロナ

 2013年6月28,29日、国際最小侵襲足の外科学会GRECMIP(現MIFAS)主催のMISセミナーに参加しました。

2011年に最初に受けたMIS手術セミナーと内容はほぼ同じでしたが、自分の知識や手技の復習と確認や、実際に自分でやってみてやりにくかったことや疑問に思ったこと、またこれから手術を検討していた症例についての相談も兼ねて、参加しました。会場は同じところで、郊外の施設でした。

手術セミナーがバルセロナで開催されるのが多いのは、私がしているタイプの足の外科のMISがヨーロッパで最初に始まったのがスペインであるためだけではないようです。施設が充実しているのと、解剖に関して故Golano先生が積極的に整形外科関連の手術の発展に協力されていたためだと思います。

実際、MISでない他の足の外科の手技についても、アメリカの先生がこの施設で手術前後に解剖して結果を確認をしたという論文がときどき出ています。

このときのセミナーでは、一番最初に同じテーブルで講習を受けたイタリア人のCarloが、インストラクターの一人になっていました。いっしょに学んだのに、かなり差がついてしまったものだと、悲しくなりました。日本では、まず器具の収集から始めなければならず、他に相談できる先生もいないので、経験数や学会とのコネに差がつくのは、当然といえば当然かも知れませんが。

その2年後には、自分もシドニーでこの学会主催のMISセミナーでインストラクターをすることになるのですが、その話はまたの機会にしたいと思います。

このときのセミナーでも、例によって日本からの参加は私一人だけでした。初日の夜に開催された食事会で、日系ブラジル人のAsaumi先生がいて、お話をさせてもらいました。その先生は、以前、日本の大学病院に見学に行ったことがあるそうです。

バルセロナ市街での夕食会の会場です。私が一番乗りで、待っていても、30分間は誰も来ませんでした。翌朝知ったのですが、夕食の開始が遅くなったと、手術セミナーの会場のホワイト・ボードに手書きされていました(笑)。

お酒が入っていたせいもあるかも知れませんが、彼からは、いろいろ説教をされました。

まず、日本人はもっと海外の学会に出るべきだ、と言われました。日本の大学病院を見学して、日本のレベルが高いことは知っているが、海外での発表や論文も少ないし、国際学会にも出てこない。もったいないし、日系人として恥ずかしい、と言っていました。

私個人に対しても、もっと英会話能力を上げるべきだ、と言われました。実は、それまでも、オンライン英会話を試してみたり、PCや携帯電話の言語を英語にしたり、英語の4行日記を毎日つけたりしていたのですが、普段の仕事や国内の学会で英会話をする機会はほとんどありませんでした。国際学会やセミナーのとき以外は、せいぜい国内の学会で外国からきた先生とお話するときくらいでした。

オンライン英会話は、一度カナダの医療系のコースを取ってみたことがあるのですが、正直言って高額でした。他のオンライン英会話では、医療系の話をすると、相手が理系の大学生くらいでもこちらの話が通じないので、結局やめてしまいました。

PCやスマホの言語を英語にしたり、英語の4行日記をつけるのは、10年以上続けてはいます。

しかし、実際にやってみるとわかると思いますが、しばらく続けると、使う単語や表現に慣れてしまい、ある程度のところで伸びが停滞してしまいます。

他の国ではとっくにやられていますが、最近は日本の大学でも、授業が英語化しているそうです。これまで日本は恵まれていて、教科書も日本語で書かれていたり、海外の本でも日本語に訳されているものが充実していました。しかし、一度日本語で教科書が出ると、次の改定までに内容が古くなってしまっていることもあります。反対に、母国語に翻訳する人材が少ない国では、最初から英語の本で学ぶので、英語に慣れているでしょう。

私は、大学を卒業してしばらくたってから、ようやく英語の本や論文を日常的に読むようになりました。一般の教科書だけでは、専門的な仕事には内容が不足するようになったからです。わりと簡単に読めるようになったな、と実感できるようになるまでには、読み方を工夫したりして、けっこう時間がかかりました。機会があれば、私の英語の論文の読み方の工夫についても、お話できればと思います。

Asaumi先生とは、2017年にポルトガルのリスボンで開催されたヨーロッパ足の外科学会の夕食のときもお会いしましたが、残念ながら、そのときも私の英会話能力はあまり改善していなかったのではないかと思います(汗)。

話は変わりますが、バルセロナに行く機会が多かったので、バルセロナで定宿にしていたホテルがあります。バルセロナ大学病院のそばで大通りに面しており、地下鉄の駅もそばにあります。また、帰りに空港に向かうバスのバス停も、それほど遠くありません。値段もそれほど高くなく、朝食もついています。フロントの人はバイトなのか、行くたびに違いますが、朝食のときにいるインド系の女性はいつも同じです。

そのホテルの近くに、以前からずっと気になっていたバル(小さなレストラン)がありました。通りに面していて、前を通るといつも客が大勢いて楽しそうに飲んだり食べたりしています。このときのセミナーは、予約できた飛行機の都合で、終わった日の翌朝に帰国する予定でした。なので、最後の夜は少し時間があり、次にいつ来られるかわからなかったので、意を決して、そのバルに一人で入ってみました。店員は初老の男性で、英語は全く話せませんでしたが、身振り手振りで注文できました。店の中と外のテーブルとで料金が変わるそうなので、屋外で通行人や町並みを見ながら食事を楽しみました。

数年後にこのすぐ近くで、車が歩道に乗り入れて人々をはねるという痛ましいテロがあったので、今では車止めのブロックが設置されているのではないかと思います。

バルセロナでの食事は魚介が多く、味も好みで、いつも美味しいです。

イカのリングフライと、下のお皿は沖縄のミミガーのような料理でした。

さて、このセミナーに行くときのことです。成田空港についてから、キーホルダーに小型のスイス製のアーミー・ナイフを付けたままだったことに気が付きました。これは、大学卒業後に友人と初めて行った海外旅行で、飛行機のトラブルでたまたまスイスの空港に立ち寄ることになり、そこで自分へのおみやげとして買ったものです。当時は空港内の待ち時間に買えて、機内への持ち込みも問題にならなかったくらいのごく小さなものです。ナイフよりも、毛抜きやハサミが付いているのが便利で、今でも使っています。ご存じの方も多いと思いますが、同時多発テロがあってから、手荷物検査が非常に厳しくなりました。このセミナーでは、機内持ち込み以外の荷物は持ってきていなかったので、別に窓口で預けるとなると、少し調べただけでも、出国前や帰国後の手続きなどが面倒そうでした。例によって帰国後のスケジュールも詰まっていて、すぐに自宅に戻らないと、いろいろ支障が出る可能性がありました。かといって、記念品なので捨てるわけにもいきません。

考えた末に、成田空港内のコンビニで封筒と切手を買い、この小型ナイフを自宅に郵送しました。実際、このセミナーの帰りは、なぜか空港が大変混雑しており、別の荷物のやり取りに時間がかからなくて、本当に助かりました。

帰宅後、先に郵便で帰っていたこの記念品のナイフを、再びキーホルダーに取り付けました(笑)。

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