最初に足の外科のMIS手術セミナーに参加したのは、2011年1月28日のスペイン、バルセロナでした。セミナーの前に、バルセロナ大学のAsuncion先生のご厚意で、先に実際の手術を見学させていただくことになっていたので、数日前にスペインに向かいました。
仕事を終わらせるためと、前日の臨時手術での睡眠不足も祟り、行きの飛行機の中で体調不良になってまいっていました。いつも海外に行くときは、セミナーや学会に参加して帰ってくるだけなのに、ほとんど毎回のように何かしらのトラブルに巻き込まれるのですが、皆さんはどうですか?
バルセロナ大学病院は、石造りで天井が高く、歴史ある建物でした。廊下には歴代の偉い先生方の肖像画(写真ではないですよ)がずらりと並んでいました。
足の外科チームのメインの医師は二人だけで、Asuncion先生は主に前中足部を、もうひとりのDaniel先生は後足部の手術を担当していました。他に、コスタリカから女医さんが見学に来ていました。
週2日、朝から午後まで数件の手術がありましたが、日本とはいろいろ異なる点があり、驚かされました。
まず、大学病院での手術なのに、入院はほとんどなしです。麻酔科医が隣の部屋で超音波装置を使って鮮やかにブロック麻酔(足首から先だけの麻酔)をかけておきます。手術が終わると患者さんは歩いて帰り、その次の患者さんが入ってきて手術です。全身麻酔でも、術後に隣の部屋で休んで、十分麻酔が冷めたら歩いて帰ります。大学病院なので、決して軽い手術ではなかったにもかかわらず、見学期間中、入院手術は一人だけでした。
この中で、はじめて実際のMIS手術を見ました。本やDVDで勉強はしていきましたが、小さい切開で何をやっているのかよくわからないまま、いつもの手術の何十分の1かの時間で終わってしまいました。
手術の間の日には、外来見学もさせていただきました。MISの術後を見せてもらうためです。
大学病院なのに外来患者さんも非常に多く、何十人も来られました。紹介患者も多く、手術も次々と予約が入っていきました。Asuncion先生は複数の外来ブースを使い、一人診察が終わると、あとは研修医に必要な検査や手術の同意書の説明を任せて、自分自身が次から次へとブースの間を飛び回って診察していきます。
術後の患者さんも多く、広い部屋に何人も寝て待っていました。看護婦さんがすでに包帯を取って傷がみえるようにしておき、そのベッドの間を次々と見て回って指示を出すと、消毒も包帯も、あとは看護婦さんがしていました。それぞれの分業体制がしっかりしていて、非常に効率的だと感じました。
その合間や外来後に、「この疾患や概念を知っているか?」などといくつか質問、説明をしていただきました。知らなかったことも多く、思い返すと、その後の10年の間に、日本やアメリカの足の外科学会で話題に上ってきたことを、すでにその時点でいくつか先取りしていました。ヨーロッパ、スペインの足の外科は、かなり進んでいると実感させられました。
夕方には、他大学や他病院から集まった多くの先生たちに、ミニ手術セミナーもされていました。大手の器械会社の製品なのに、日本には未だに入ってこない器具を使った手術の説明です。
それまでは、スペインと言うと、午後はシエスタでゆっくりお休み、という印象しかなかったのですが、毎日朝からハードスケジュールで、手術前や短い間にお菓子をつまむ程度で、午後3時過ぎまで働きづめなのには驚きました。
学会やセミナーは、たとえ海外でもいつも行って帰ってくるだけですが、スペインは1週間くらいの滞在になったので、途中でサグラダ・ファミリアに行きました。
バルセロナは、海が近いせいか魚介の料理も多く、パエリアは米も使っていて、料理も口にあって美味しかったです。
このバルセロナ大学の見学が終わった後に、大学病院から離れた解剖学教室のある大学施設で、初めてのMIS手術セミナーに参加したのでした。そのときの話は、また次の機会にしたいと思います。