2011年の1月、スペインのバルセロナ大学病院で手術と外来を見学させていただい後、病院とは離れたところにある施設で、初めての足の外科MISセミナーに参加しました。
日本からだと参加費の振り込みが困難だったため、何度か事前に交渉した結果、特例として現地受付で参加費を支払いました。
会場にはヨーロッパ各国から医師が集まっており、熱気にあふれていました。もちろん、まだ本でしか知らなかったIsham先生、Prado先生、Golano先生という著明な先生方が講義と実演をしてくださいました。
まず、MISについての概要、その後、器具などの扱い方の説明がありました。次に実際の手術の説明です。最初に各手術手技の講習、骨のモデルを使った説明、実際の足を使った手技の見学です。
Isham先生、Prado先生が、いとも簡単そうに骨モデルを切ったり、実際の足を使って手術して見せてくださいました。本やDVD、直前にバルセロナ大学でも何件か手術を見学したばかりでしたが、まるで魔法のようでした。
また、お二人の先生が手術した足を、その場で解剖学者のGolano先生が解剖して、きちんと目的とする操作ができていること、神経や腱が損傷を受けていないことを見せてくださいました。以前から日本の足の外科学会でもGolano先生の解剖図はその美しさで有名でしたが、大きめのメスとピンセットだけで手際よく解剖する様は、まるで一種の芸術のように素晴らしかったです。
その後、二人一組で1つのテーブルに分かれて、骨モデル、足を使った手術の実習をしました。
私は、イタリア人のCalro Biz先生と一緒になりました。Calroとは、英語でいうところのチャールズだそうです。
困ったことに、パンフレットでは英語のセミナーと書いてあったのですが、私達のテーブルについた担当者がスペイン語しかできず、また、解剖学教室の方だったのか、MISについての細かい知識がないようでした。
ただ幸運なことに、Calroはスペイン語と英語ができたので、通訳してもらいました。代わりとして、私は事前にMISの本を何度も繰り返し読んで予習していったので、彼に細かい説明をしました。
話す中で、彼が以前のヨーロッパ足の外科学会で、Endlogという髄内釘を使った外反母趾の手術の成績を発表していたことを思い出しました。そのことを話すと、非常に喜んでくれました。今でも彼はその器械を使っており、最近のアメリカの雑誌にも掲載されていました。
また、2012年にオランダで開催されたヨーロッパ足の外科学会の初日、会場に向かう途中のアムステルダム駅で偶然再開し、一緒に会場に向かいました。その後も、ヨーロッパの学会でよく会い、そのたびに話をする仲です。
さて、足の外科のMISで行う手術自体は、基本的には従来のように切開してする方法と類似していますが、以前にもお話したビーバーメスやバー、モーターといった、今まで使ったことがない器具には、従来とは違った扱いが必要です。このときには、理屈はわかっていても、デモンストレーションしてくださった先生方のように行うのは、最初はなかなか難しかったです。コツを教わりながら、何度も基本手技を反復・練習しました。
なお、前回の「MISで使う器械:モーター」でお話したように、使われていたモーターはすべて日本製でした。
ご高名な先生方から、「膝や肩など、整形外科の他の分野では関節鏡視下手術などがどんどん主流になってきている。足の外科でも、ようやく足関節鏡が行われるようになってきたが、足部のMISはまだほとんど行われていない。これからは、足もMISの時代だよ」、という熱い薫陶を受けました。
こうして、帰国後に日本で足の外科のMISを始めたのですが、まずはMISに必要な器械を集めるところから苦労したのは、このブログの器具関連でお話したとおりです。